交通事故で殺人罪が問われることはある?

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交通事故では被害者に大きな怪我を負わせてしまうだけでなく、場合によっては死に至らせてしまう恐れもあります。では交通事故で誰かを死なせてしまった場合は殺人ということになるのでしょうか。今回は交通事故と殺人の関係性、法律上の扱いについて解説していきます。

また、どのような刑罰が科されるのかも合わせて説明します。


交通事故で人を殺めてしまった場合はどうなる?

車は非常に便利なものである一方、走る凶器と形容されることもあります。時速50キロメートルで走る車にぶつかることはマンションの5階から落ちることに匹敵するほどの衝撃となります。そのため、交通事故被害者の方は大きな怪我を負ったり、亡くなってしまったりすることがあります。

交通事故の加害者は民事責任だけでなく、刑事責任も問われることになります。

では人を死なせてしまったからといって即座に殺人罪が適用されるのかというとそうではありません。運転に何らかの過失があった場合は過失運転致死傷罪が適用され、7年以下の懲役もしくは禁錮、または10万円以下の罰金が科させられます。

殺人罪の場合は死刑または無期懲役、あるいは5年以上の有期懲役となるので大幅に違うことが分かります。どうしてこのような違いがあるのでしょうか。

交通事故で人が亡くなっても殺人罪が適用されにくい理由

交通事故で人が亡くなったとしても、人を殺めてしまっている点では殺人と同様です。しかし、罪状には大きな違いがあります。

これは殺人罪が故意に人を殺めてしまっていることに対する罪なのに対し、交通事故での死亡は過失によっておこるものと基本的には考えられているからです。

被害者や遺族の心情を考えると殺人罪に匹敵するほどの罪であっても不思議ではありませんが、人を殺そうなどとは全く考えてもいなかった人が加害者になってしまう恐れがあることは交通事故の恐ろしいところです。

法律上は殺意があったかどうかが重要なポイントとなります。

交通事故は殺人罪にならないのか

交通事故を起こした際に殺人罪が適用されることがないのかというと決してそんなことはありません。車を凶器として明らかにわざと轢いた場合は殺人罪が適用されます。殺人の罪を軽くするために車を使って殺人を行うことはこの仕組みによって防がれています。

ただ、殺す意思があったのかどうかについては判断が難しいところでもあります。例えば車を走らせる必要のない場所に車で乗りこんでいき、そのまま特定の人間にめがけて走り出したという場合は明らかに殺人の意思があるとみなせるので殺人罪となります。

しかし、横断歩道を渡っている最中の人にめがけて全速力で車を突っ込ませたという場合は殺人の意思が問えるか難しいかもしれません。もちろん、過失ではないことが明白であるため、危険運転致死傷罪以上の適用がほぼ確実となりますが、殺人罪となるかどうかについては裁判で争われる部分となっています。

しかし、車による殺人が殺人罪にならなかった場合、そのことを知った人物が殺人に車を使用することが考えられます。そういったことにならないように司法は厳しい判断を下す仕組みになっています。

交通事故の際に殺人の意思があったかどうかはどう判断される?

交通事故の際には現場検証が行われます。そこで交通事故がどういった経緯で起こったのか、加害者の運転にはどこまで問題があったのかが調査されます。例えばブレーキの跡が全くない、アクセル全開である、特定の人物に向かって走っているなどの情報が集まった場合は殺人である可能性があります。

逆に避けようとしたハンドル痕が残っている、ブレーキを強く踏んだ痕跡があるという場合は殺人ではなく、過失である可能性が高いといえるでしょう。日本の警察は高い技術を持っているので交通事故の後の現場を検証すれば、事故の内容や運転手の過失度合いを調べることが出来ます。

加害者と被害者の関係性も重要となります。交通事故は多くの場合、赤の他人同士で起こるものですが、稀に知り合い同士で事故になってしまうケースもあります。加害者が被害者に対して恨みを持っていた場合は、事故を装った殺人の可能性が高くなるのでその辺りの調査も実施されます。

もちろん、恨みを持っていた相手をたまたま過失で轢いてしまうというケースもあるため、そういった関係性があれば即座に殺人罪になるというわけではありません。殺人罪が適用されるか、過失運転致死傷罪が適用されるかで大きく変わるので非常に慎重な検証が行われます。

過失と殺人の意思の両方がない場合

交通事故には過失と殺人の意思の両方がない場合もあります。とにかく大幅な速度オーバーをしたり、わざと信号無視をしたりして事故を起こすケースがこれに当たります。ミスではなく、わざとやっているということで悪質ではありますが、かといって殺そうとしていたわけでもないというケースです。

この場合は危険運転致死傷罪が適用されます。これは自動車の危険な運転によって人を死傷させた際に適用される罪であり、1年以上の有期懲役となります。基本的には過失運転致死傷罪と殺人罪の間にあたる罪となっています。

飲酒運転の場合は過失とみなされることが多いのですが、あまりにも悪質な場合は危険運転致死傷罪が適用されます。しかし、飲酒をしてから非常に危険な運転をしたり、轢いた方を完全に無視したりすることは殺人に匹敵する罪であるとの見方もあり、議論がなされています。

(悪質な交通事故を引き起こしてしまった場合、殺人罪が適用されることはある?)

交通事故の後の対応

交通事故の後の対応で罪の中身が変わってくることもあります。例えば人を轢いた後にそのことを知りながら引きずり続けて死なせてしまった場合は殺人罪が適用される可能性が高まります。これは事故を起こした後に適切な救護を行うことで助かった可能性があるからです。

また、このまま引きずったら死なせてしまうかもしれないのに引きずったという未必の故意があったとみなされることも理由の1つとなります。加えて殺人を行おうとして自動車を使用している人物の場合は救護しないと考えられます。

逆に言えば事故が起こった後に全力で救護に当たっている方には殺人の意思がない可能性が高いと言えます。もちろん、カモフラージュしているケースもあるので裁判所の判断はそこまで単純なものではありませんが、事故後の対応が裁判所の審判に及ぼす影響は大きいといえるでしょう。

人の命を救うためにも事故を起こしてしまった場合はすぐに救護に全力を尽くすことが必要となります。

参照元⇒弁護士交通事故
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